『はだしのゲン』作者・中沢啓治さんの妻ミサヨさん
『はだしのゲン』作者・中沢啓治さんの妻ミサヨさん(撮影:大島雅紀)

6歳で被爆した自分の経験をベースにした『はだしのゲン』の連載が始まったのは1973年、単行本化されたのは75年です。50年以上経っているのに多くの人に読んでもらえて、夫も喜んでいると思います。

『はだしのゲン』を描き始めた頃は、被爆体験を語る人は少なかったんです。被爆者への偏見や差別があって、縁談にもさしつかえるので、多くの方が口をつぐんだ。

今でも、「親は話してくれなかった」とよく聞きます。私も結婚当初は、夫の口から被爆体験を聞いたことはありませんでした。

私自身は呉市の小さな島で生まれ育ち、原爆が投下された時はまだ3歳だったので、原爆のことは全然知りませんでした。

あのキノコ雲の下で、何が起こっていたのか。人々はどんな目にあい、死んでいったのか。あるいは、それからの日々をどう生きていったのか。

広島県で生まれた私でさえ、『はだしのゲン』を読むまでは、それを知らなかったのです。