女優のコミュニケーション力が介護の仕事にも大いに役立つ

女優として、さまざまな現場でさまざまな方々とコミュニケーションを重ねてきた経験は、介護の仕事に生かされているのでしょう。

たとえば介護の現場のスタッフに言わせると、「頑固なおじいちゃん」という方がいるとします。

その頑固なおじいちゃんへの対応は、舞台の演出家や映画監督がひとつの演技に何度もNGを出すのに対して、あの手この手で創意工夫をし、OKをもらうのととても似ています。

また、「ごはんを食べたくない」「お風呂に入りたくない」と訴える方がいたとき。

その原因を探るとっかかりを見つけるため、アンテナを張りめぐらせて引き出しをたくさん作り、「この人はどんな話が好きかな」ということを考えます。それらを手がかりにコミュニケーションを始めるのですね。

奥さんがきれいな方だったら、「きれいな女性がお好きなのですね」「もしかしてもしかして、ウワキの経験、あったりして……」と少しくだけた話もしてみます。

するとニヤッとして、頑(かたく)なな表情が溶けていくのです。そして、どんどんご自身のことを話してくださいます。

そういうコミュニケーションが本当に楽しくて仕方ありません。

相手の方が心の扉を開いてくださった瞬間、「この仕事をしていて、よかった!」と実感します。

※本稿は、『ケアマネ女優の実践ノート』(主婦と生活社)の一部を再編集したものです。


ケアマネ女優の実践ノート』(著:北原佐和子/主婦と生活社)

女優・北原佐和子さんが、女優歴42年、介護職歴18年で培った、優しい介護コミュニケーションを伝授。

日常シーンでの介護のヒント、専門家監修のイキイキ体操、いざというときの基礎知識まで。

北原さんが介護の現場で経験したエピソードから、私たちにできることが見えてくるはずです。