「孤独の不安があるなら、まずは一歩、外へ出てみたらいいのよね」(吉永さん)

孤独の不安があれば一歩、外へ出てみる

稲垣 私は「楽しく下っていく人生」を目指して暮らしていますが、いま、小学生のとき以来のピアノを習っています。子どものときは練習がイヤで投げ出したけれど、発表会に出るとか何か達成することは目指さずに、ただ練習するのが面白くて。

小谷 それは楽しそう!

稲垣 ピアノが多少上手くなったからって何になるわけじゃないんですけど、そこが最高なんですよ。目標を持たずに、そのことをただただ楽しめるって、人生後半戦の特権だと思います。一喜一憂する狭い世界から解き放たれた自由ったらない。

下っていくって惨めなことのように思われがちですが、何かを失うと、別のものがやってくる面白さがあるんですよね。

たとえばいまの家に越してきたときも、周りに知り合いはゼロ。だから個人商店で買い物をしたり飲食店の常連になったりして顔見知りを増やして。そうしたらいま近所に100人以上の友達がいる。

銭湯で「あの人、今日は来てないね」なんていう世間話が日常になると、もし自分が明日孤独死しても、すぐ見つけてもらえると思えるんです。

吉永 すごいねえ。私なんて近所に知り合いはほとんどいない。愛犬がいた頃は、「Aくんのママ」として、犬仲間と散歩途中におしゃべりしたものだけど。

小谷 人づきあいがあると、世界が広がりますね。私はコロナ禍の外出制限で誰とも会えなくなったとき、マンション周辺のゴミ拾いを始めたら、近所の人から「消防団のなり手が少ないので入団しませんか」とスカウトされて(笑)。訓練に参加したり、今日も午前中に近所の小学校で夏祭りのお手伝いをしてきました。

吉永 孤独の不安があるなら、まずは一歩、外へ出てみたらいいのよね。私も地域のシニア講座とか、いずれ顔を出してみようと目星をつけています。