「ひとりになったとき、あとは『やりたいことをやって、人生をまっとうしよう』と思ったんです」(小谷さん)

小谷 皆さん、ちゃんと考えていて偉いです(笑)。私も50歳からフリーで仕事をしていますが、もともと物欲がないし、お金がなければ外食を控えよう、くらいのどんぶり勘定。収入があれば使って、人生を楽しみたいという気持ちが強いです。

吉永 それは伴侶を若くして亡くしたことも関係していますか。

小谷 夫は厚生年金を支払っていましたが、子がおらず、一定の収入があった私には遺族年金の受給資格がありませんでした。つまり、彼が20年間にわたって支払った千数百万円はパー。

「そんなアホなことあるか!私は自分のお金を生前にあげたい人に渡そう」と思って。若い頃に縁があったアジアの国に恩返ししたくなり、カンボジアで若者にパン作りを教えたり、がん患者の団体に寄付をしたり。

最近も単身高齢者のための食堂を始めようと、知人の飲み屋さんの協力を得ましたが、「消防設備に費用がかかる」というので、「なら私が出しましょう」と。

吉永 そりゃあ少々ばらまきすぎじゃない!? もう少し、ご寄付も計画的にというか。(笑)

小谷 ひとりになったとき、あとは「やりたいことをやって、人生をまっとうしよう」と思ったんです。まだその日暮らしの人も多い国々を旅していると、お金というのは人生を楽しむ手段であって、何かを我慢してまで将来に備えるのは違うような気がしてきて。