「安静にして寝るしかないなと目を閉じたのですが、明日、目が覚めなかったら……それはそれでしょうがないか……と思いながら寝入ってしまいました」(撮影:藤澤靖子)
手頃な価格に適度な広さ。周辺は緑が豊かで、地域猫がやってくる――。そんな団地に40年近く暮らしているのが、漫画家の齋藤なずなさんです。『ぼっち死の館』は、団地暮らしの日常をもとに描かれたもの。実際の生活や、周囲の方との関係性について、お話を伺いました(構成=篠藤ゆり 撮影=藤澤靖子)

前編よりつづく

現役だけど暮らしは自転車操業

いまは、自分だけの時間を満喫しているけれど、ひとり暮らしの不安は少しあるかもしれません。

実は数年前に入院したことがあって。その日は、何だかふわふわするな、おかしいなと思って一応病院に電話しました。そうしたら「明日にしてください」と言われてしまったんです。安静にして寝るしかないなと目を閉じたのですが、明日、目が覚めなかったら……それはそれでしょうがないか……と思いながら寝入ってしまいました。

結局、翌日きちんと目が覚め、病院に行ったら即入院。軽い脳梗塞という診断でした。10日ほどの入院中は、鍵を預け合っていた同じ団地の人が手助けしてくれて助かりました。

もうひとつの不安は、お金のこと。脳梗塞の後遺症で、3ヵ月くらいは字と絵が描けませんでした。焦って一生懸命に描いても、ミミズみたいなよれよれの線にしかならない。

現役の漫画家だからか、あんまり信じてもらえないのだけれど、家計は自転車操業なんです。フリーのイラストレーターから漫画家になって、大学で教えたり、いまは自宅で漫画教室を開いたりもしていますけれど、ずっとフリーランス。ここも賃貸で、家賃が7万3000円とそこそこかかります。

ですから死ぬまで働かなくちゃと思っていて、漫画が描けなくなったらどうしよう、と不安でした。元通り線が描けるようになって、本当によかった。ホッとしました。

健康やお金の不安はありますが、まあ何とかなると思っているのも本音です。