R&Bに国境はない

長く活動をしている中で、世界中で演奏させていただいています。そこで感じるのは、やはり一流の音楽は国境や言語の壁を簡単にこえるものだということ。会ったその日にその場でセッションすることができる。これまでアメリカ、アフリカ、アジアのいろんな国を渡り歩いてきました。

上田正樹さんの写真
(撮影:本社・奥西義和)

ミシシッピでは、本場のR&Bに触れましたし、その源流を求めてアフリカにも行きました。彼らは言語の前にリズムや踊りがあって、生まれながらに裏拍のリズムを刻むことができる。インドネシアでは、しばらく暮らして現地の歌姫REZAと歌った「Forever Peace」が、現地のヒットチャートで17週連続1位を記録しました。韓国のプロデューサーからもオファーをいただいて、僕は韓国でもアルバムデビューしているんです。シングル「Hands of Time」は運よく視聴率30%以上のドラマ『ゴースト』の主題歌に使っていただき、デビューアルバムは20万枚のセールスでした。韓国語でも歌えと言われて、なかなか発音がうまくいかず何十回も録り直したことも。そっちは結局、リリースされず没になってしまいましたけど。

一方で聞いたことのない町に行ってライブをして、お客さんが全く集まらないような経験もしました。それも、今ではいい思い出です。

一緒にこの度のライブで歌ってくれるYoshie.Nは、タイの3000人くらい収容できるライブハウスで熱唱して満員のお客さんに涙を流させていました。彼女は日本を代表するブルースの歌手ですが、タイでは有名というわけではありません。音楽は有名、無名に関わらず、一流であればそこにいる人たちの心を動かすことができる。タイでYoshie.Nがそのことを証明しているのを目の前にして、僕は参観に来た父親みたいに感無量でした。