七実の成長記としても面白い

眠り続けた七実を心配したのが、高校時代からの友人でマルチこと天ヶ瀬環(福地桃子)である。高校時代に彼女の母親がマルチ商法に熱心だったため、こう呼ばれるようになったが、いつの間にか自分もどっぷりマルチ商法に浸かっている。

七実が電話にも出ないため、環は一計を案じた。マルチ商法の商品「私らしくウォーター」を勝手にどっさりと送り付けた。七実は慌てて環に電話してきた。
「うちに怪しい水が届いてるんやけど」「返品できる?」(七実)

よほど「私らしくウォーター」が迷惑なのだ。環は水の返品を受け付けるという名目で七実の家を訪ねた。

その場で環は七実を慰める、しかし七実は環の前でも劣等感を口にする。自分を「最低の人間」と責めた。グチだ。

しかし、そんなことを言い続けても仕方がないから、環は七実にカンフル剤を与える。

「自分のせいにするのって楽ですよね」(環)

辛辣な言葉である。それでも七実が不貞腐れていると、環は突き放した。

「傷付いているからといって、人の思いを踏みにじったり、何を言ってもいいという免罪符はないと思います」(環)

このドラマは家族の物語が中心だが、七実の成長記としても面白い。七実は周囲から叱咤激励を受けることによって大きくなっていく。

環の出番はそう多くないが、印象が濃い。環の登場シーンは“ボーナストラック”のようなもので、お得感がある。大抵は笑いを誘う。爆笑ではなく、クスクスといった忍び笑いである。ご存じの方が多いだろうが、環役の福地桃子(26)は「アニキ」と呼ばれている哀川翔(63)の実娘だ。