「織部茶碗」。釉薬で大胆な模様を描いた世良さんの作品(写真提供◎古川美術館)

 

陶器を作るには、土の状態を整え、ろくろで成形し、素焼きしたあと釉薬をつける、といった手順があります。どんな色に焼き上がるか想像しながら制作するのですが、最終的には窯に入れて炎に委ねるしかない。

そうして焼き上がった陶器は、想像を超えるものが出てくる。それが陶芸の面白さなんです。絶妙な色のグラデーションが生まれたり、緑色が全部飛んで真っ黒になったりすることもある。良くも悪くも一期一会。同じ器は二つと生まれません。

ありがたいことに、現在は多治見の幸兵衛先生のところにある、江戸時代から続く薪窯を使わせていただいています。

職人さんたちが交代で火の番をし、5日間かけて焼き上げる。僕も幸兵衛窯に行った際にはお手伝いしますが、1200度の窯に薪をくべるわけですから、真夏でも耐火性を備えた長袖・長ズボンを着て、手袋をし、頭にタオルを巻き、ゴーグルをして完全防備。

焼き上がって完成ではなく、窯から出したあとは、作品についた灰や石ころを落とし、やすりをかけて滑らかにしたりと、さらに作業が続きます。

土を練ってから、作品が完成するまでに半年以上。今は何でもデジタル化された、スピードの時代でしょ?陶芸は、ひとつひとつの工程を丁寧に行うことの大切さを教えてくれます。