(写真提供:Photo AC)
総務省統計局が行った「令和3年 社会生活基本調査」によると、6歳未満の子どもを持つ世帯が家事や育児などに費やす時間は、夫が1.54時間、妻が7.28時間だったそう。そんななか、家事シェア研究家の三木智有さんは、家事育児をひとりに頼り切らない「チーム家事」というスタイルを広めるため活動しています。そこで今回は、三木さんの著書『家族全員自分で動く チーム家事 日本唯一の家事シェア研究家が導き出した』から、家庭生活をより良くする考え方を一部ご紹介します。

「おかえり」を言うのはママの役割?

「子どもが家に帰ったとき、ちゃんとお母さんが『おかえり』って迎えてあげる。子どもはそういう母親に安心すると思うんですよね。僕は子どもの頃、いわゆる鍵っ子で。誰もいない家にひとりで帰るのは、さみしかったんですよ」

稔さん(仮名・30代)は「理想の家庭像」をそう答えました。

でも、妻の亜紀さん(仮名・30代)にはそれがプレッシャーでしかないようです。

「学童を終えて子どもが家に帰ってくるのは、だいたい17時過ぎです。夫は『時短にすればいい』とか『無理に仕事しなくてもいいんじゃないか』って言うんですけど」

亜紀さんにしてみても、子どもを迎えてあげたい気持ちはあるのですが、どうしても帰りは18時を回ってしまう。

亜紀さんは稔さんの「理想の家庭像」にプレッシャーと違和感を抱きながらも、どこかで「本当はそれがいいんじゃないか」という小さな罪悪感を抱いていました。

ご夫婦は子どもを母親が「おかえり」と必ず迎えてあげたほうがいいかどうかで、すれ違っていたのです。

稔さんの意見は「ママが子どもを迎えてあげるべき」。経験は「子どもの頃、鍵っ子だった」。感情は「さみしかった」。価値観は「家に帰って母親がいる暮らしを子どもにさせてあげたい」です。

亜紀さんの意見は「子どもを迎えてあげるのは毎日じゃなくてもいいんじゃないか」。経験は「仕事で早く帰れないこともある」。感情は「(子どもに)申し訳ない」。価値観は「迎えるのはパパでもいいし、そこは夫婦で協力しあえばいい」です。

こうしたことについて話し合いを重ねていくうちに、稔さんは自分が感じていたさみしさを子どもに感じさせたくないと思いながら、その責任を妻だけに押し付けようとしていたことに気づきました。子どもが「さみしい」と言ったわけでもないことにも。

だったら、夫婦でお互いに調整し合いながらなるべく子どもを迎えてあげられるようにすればいいと思うようになったそうです。