義理人情に厚いヤクザの親分・阿岐本雄蔵のもとには、一風変わった経営再建の話が次々舞い込んでくる。今度は町の小さなお寺!? 鐘の音がうるさいという近隣住民からのクレームに、ため息を吐く住職。常識が日々移り変わる時代のなか、一体何を廃し、何を残すべきなのか――。


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 西量寺を訪ねた日から数日経ったが、日村はずっと狐につままれたような気分でいた。気がついたらいつの間にか、駒吉神社の件も、西量寺の件も片づいていた。
 阿岐本が特に何かをしたというわけではない。関係者から話を聞いただけのような気がする。
 それで、宗教法人ブローカーのことも、寺の鐘のことも解決してしまった。
 いつものことだが、まるで魔法を使ったかのようだと、日村は思った。
 こっちは出入りまで覚悟したっていうのに……。
 平穏な日々が戻ったと思っていたら、突然高森が事務所を訪ねてきた。