義理人情に厚いヤクザの親分・阿岐本雄蔵のもとには、一風変わった経営再建の話が次々舞い込んでくる。今度は町の小さなお寺!? 鐘の音がうるさいという近隣住民からのクレームに、ため息を吐く住職。常識が日々移り変わる時代のなか、一体何を廃し、何を残すべきなのか――。

 翌日は十月十九日日曜日、大安だ。
 午前十一時頃、西量寺の田代住職から日村あてに連絡があった。折を見て訪ねてきてくれないかという。
 それを伝えると、阿岐本が言った。
「大切な用事が残っていたな。もともとは寺の鐘への苦情をどうするかって話だった」
「はい。そちらはまだ解決していません」
「午後にでも出かけてみよう。二時頃でどうだ」
 それを田代住職に伝えた。
 田代住職が言った。
「二時ですね。じゃあ、お待ちしています」