落ち着け、息子

高校野球は特別開催ということで、甲子園出場校から今年北海、花巻東、仙台育英、土浦日大、慶應、履正社、おかやま山陽、神村学園の八校が選出され、初日から甲子園決勝戦と同じカードの対決となるなど、かなり世間の注目を集めていた。トーナメントで最大3回勝つと優勝である。

この八校に選ばれるまでもドキドキだったが、
基本的に出場するのは三年生主体の、甲子園登録メンバーと決まった。

翔大にとってはチームが選ばれたとて、また応援サポートの立場。切ないけれど、大きく手を振っても自分には出番のない話だと思っていたわけだ。

「お母さん、今日履正が国体に選ばれた!」

「お母さん、メンバーは甲子園ベンチ入り【外】からもあるもしれないって!」

「お母さん、国体の日程と新チームで臨む大阪大会の決勝がかぶったら、補欠メンバーから国体に選ばれるかもしれないって!」

「お母さん!国体なんだけど…」

どうどうどうどう…落ち着け落ち着け、息子。

とにかく毎日毎日学校の合間に電話をかけてきては嬉々として国体の話をしてきていた。
この頃になると、3年生のモチベーションは大学進学やその先の野球のための体力維持ということで、走ったり振ったり、下級生の傍ら自分でやれる練習を見つけて淡々とやっていくものだが、翔大の様子はちょっと違っていた。