正規雇用の年収にも差がついている

一方、氷河期後期世代と、もっと若い世代の間の差は、データの取れる範囲ではおおむねプラスマイナス10万円の幅に収まっている。

年収の世代間格差の一部は、就業率や正規雇用比率の格差によるものだ。就業していなければ年収はゼロになるし、正規雇用よりも非正規雇用のほうが、平均的な年収が低いからだ。

しかし、卒業から10年以上たっても世代間の差が縮まらないのは年収だけであることから、正規雇用で働いている人たちの年収にも差がついていて、それが年齢とともにむしろ拡大していることが示唆される。

フルタイム雇用者のみの別のデータを用いても、やはりバブル世代、氷河期前期世代、氷河期後期以降の世代、の順で年収が低くなり、卒業後の年数がたつにつれて世代間の差が広がっていく。

まとめると、年収についても、バブル世代と氷河期世代に差があるだけでなく、氷河期世代の中でも前期と後期で差がある。

その反面、若年労働市場が逼迫(ひっぱく)したと言われている時期に卒業したポスト氷河期世代は、氷河期後期世代とあまり変わらず、氷河期前期世代よりも低い水準にとどまっている。

また、就業率や正規雇用比率と異なり、年収の世代間格差は歳をとっても縮まらないという特徴がある。

※本稿は、『就職氷河期世代-データで読み解く所得・家族形成・格差』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。


就職氷河期世代-データで読み解く所得・家族形成・格差』(著:近藤絢子/中央公論新社)

バブル崩壊後の不況期に就職活動をせざるを得なかった「就職氷河期世代」。

本書は1993~2004年に高校、大学等を卒業した人々を就職氷河期世代と定義し、雇用形態や所得、格差などを統計データから明らかにする。

データから見える現実、講じ得る支援策とは。