19年の集会でハリス氏(右)と対面した筆者(左)。2人の後ろにいるのは筆者の夫ディビッド・ミーアマン・スコット氏(写真提供◎渡辺さん)

「歓喜」をメッセージに

新米上院議員であるハリスにアメリカ国民が注目するようになったのは、大統領選挙での「ロシア疑惑」に関する17年の上院司法委員会でのことでした。

トランプを早くから支持した報奨として司法長官に任命されたジェフ・セッションズに対し、鋭く切り込むハリスの勇姿は多くの視聴者を魅了しました。

翌年にはトランプから連邦最高判事に指名されたブレット・カバノーが過去に性暴力をふるった疑惑が浮上し、被害女性の一人が公聴会で勇敢に証言しました。感情的に自己弁護するカバノーを冷静に追及するハリスは、同様の体験を持つ女性たちにとってはヒーロー的存在に、トランプにとっては「目の上のたんこぶ」的存在になったわけです。

ハリスは友人の紹介で出会ったダグ・エムホフと10年前に結婚するまで、独身でキャリア一筋でした。実子はいませんが、エムホフと前妻との間の2人の子から「ママラ(ママとカマラを合わせたニックネーム)」と呼ばれる親しい関係を築いています。

一方、トランプが副大統領候補に選んだJ・D・ヴァンスは、「結婚して子を産み、夫のために尽くす」という伝統的な妻の役割に女性を戻すべきだとアピールしています。ヴァンスの妻はインド系アメリカ人で、非常に有能な民事訴訟専門の弁護士なのですが、政治的野望のために主張を変えたところがあります。

3年前に、ヴァンスがテレビ番組で「自分の人生で子どもがいない不幸なキャット・レディ(多くの猫と暮らす孤独な独身女性)たちがこの国を率いている」「(自分たちが惨めだから)他の人々も惨めにしたがっている」と、ハリスを始めとした民主党を批判する発言をしたことが最近になって浮上しました。

でも、ヴァンスに賛同する人はほぼ皆無で、「養子であっても自分で産んだのと同じ我が子だ」「私も独身のキャット・レディだけどハッピーですよ」といった反論がソーシャルメディアを駆け巡り、ハリスはかえって女性の支持者を増やしたようです。