ハリスには、ヒラリーにはない「黒人」というスティグマ(差別や偏見の対象とされてきた属性)がありますが、今回の選挙ではそれがあまりマイナスにはならないという見解があります。ハリスは黒人の名門大学であるハワード大学で学び、「黒人」という自分のアイデンティティを堂々と示したうえで、自力でこの地位にたどり着いた人物です。
けれどもキャンペーンでは、人種差別やそれに対する憤りではなく、共に未来を良くしていくことの「歓喜」をメッセージにしていることが感じられます。
16年にトランプが扇動した「体制への憤り」は、これまで政治に興味がなかった国民にアピールしたのですが、怒りがすっかり蔓延した現在のアメリカでは、前向きで希望が抱ける「歓喜」に惹かれる人が増えています。
だからこそ、ハリスの集会はトランプを脅かすほどの支持者を集め、ロックコンサートのような盛り上がりになっているのでしょう。
仮想敵を作って闘う興奮を呼びかけるトランプと、一緒に未来を築き上げていく歓喜を呼びかけているハリスの戦いは、ある意味、有権者に自身の生き方を問いかけるような選択になっています。