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人種差別問題に端を発した抗議デモの過激化、収束する気配の見えないコロナ禍と、社会不安が高まる中で行われた米国大統領選挙は、まさに「分断」を象徴するような結果となった。注目を集めた民主党副大統領候補、カマラ・ハリス上院議員の「今後」を手嶋氏、佐藤氏はどう見るか――

※本稿は、手嶋龍一・佐藤優『菅政権と米中危機』(中公新書ラクレ)の一部を抜粋・再編集したものです

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手嶋  民主党のランニングメイト、カマラ・ハリス副大統領候補が、今度の選挙戦でどんな役割を果たしたか考えてみましょう。これまでの大統領選挙でも、副大統領候補に誰を選ぶかは大きな話題になってきました。しかし、副大統領候補の人選が大統領選挙の行方を決める決定打になったかと問われれば、答えは明らかに「ノー」でした。

佐藤  いうまでもありませんが、アメリカの副大統領は、あくまで大統領あってのものですからね。

手嶋 ただ、時の大統領候補が、冴えない副大統領候補やスキャンダラスな副大統領を選んでしまった場合は、この経験則は当てはまりません。近くは第41代、つまりパパ・ブッシュ大統領のケースです。すでにこの名前は忘れ去られて久しいのですが、ダン・クェイル副大統領がそうです。再選の足を明らかに引っぱった。ニクソン大統領も副大統領の人選を誤り、途中で更迭を余儀なくされています。

佐藤  副大統領が政権で大きな影響力を振るったケースとしては、チェイニー副大統領がいます。ただ、このケースも選挙戦そのものの行方を決めたわけではありませんでしたね。

手嶋  アメリカの政治で、副大統領ほど不思議な存在はない。歴代の政権をホワイトハウスで取材した経験からいって、つくづくそう思います。大統領の身に万一のことがあれば、直ちに跡を継ぎ、平時には上院の議長も務めます。上院議員の賛否が同数となれば、副大統領の一票が法案の成否を決める。ホワイトハウスとは別にマサチューセッツ通りに広大な副大統領公邸を構え、ワシントン政界に絶大な影響力を誇っているように見える。ただ、現実の政治でどれほどの影響力を振るうことができるか。そのすべては、時の大統領といかなる関係を築きあげているか、その一点にかかっているのです。まさしくその名の通り「大統領制」なのです。