「蓮の女」は大輪の花を咲かせることができるか
佐藤 カマラ・ハリス副大統領の場合も、奴隷としてアメリカにやってきた黒人の子孫ではない。オバマ・ファミリーと同様に知的な家庭に生まれた「移民」の系譜に属しているといっていい。人種問題で大きく揺れている超大国アメリカはいま真っ二つに切り裂かれています。バイデン大統領がハリス氏を副大統領候補に選んだ時「この国、女の子たち、特に黒人やヒスパニックの子は、今朝起きたらまったく違う自分になったように見えただろう」と述べたのは印象的でした。彼女は、まさしく人種のサラダボウルといわれる二十一世紀のアメリカを体現するような存在です。この国を一つにまとめあげる潜在力があるはずです。しかし、それは、政策策定の力などではなく、人々を惹きつけてやまない人間力が備わっているか否かにかかっています。
手嶋 ロナルド・レーガン大統領という人が、現代アメリカを代表する歴史家たちから「二十世紀のもっともすぐれた大統領」のひとりと認められているのも、そうしたアメリカ国民を一つにまとめあげた人間的魅力にありました。
佐藤 「蓮の女」というサンスクリット語の名をもつカマラが、トランプ大統領によって引き裂かれてしまったアメリカを再び一つにまとめあげ、大輪の花を咲かせることができるか。本書のテーマである「米中対立」の行方も左右することになるでしょう。
手嶋 その通りです。レーガン大統領は、アメリカのデモクラシーに揺るぎない自信を持ち続けた人で、その信念のゆえに、あの冷たい戦争を終わらせる推進役になったのですから。