後見の役目

付き添っている少納言の乳母(めのと)は、「せめて今年からでも、大人らしくなさってください。10歳を過ぎた方は、もう人形遊びはつつしむものですのに」とたしなめ、それに続いて「姫さまは、もうご主人をお持ちになったのだから、奥方らしくなさってください」と諭します。

それを聞いた紫の上は、ようやく「そうか、わたしには夫ができたのか」と納得したと語られます。

『美しい原文で読む-源氏物語の恋のことば100』(著:松井健児/中央公論新社)

あまりにも幼い紫の上ですが、少納言の乳母は、その後見(こうけん)として、紫の上に降りかかる、いっさいの事柄を適切に処理する役目を負っています。

責任の重い、大変な立場だといえますが、それは姫君が生まれたときからお世話をしている乳母にしか与えられない特権であり、誇りでもありました。