やさしく賢明な乳母

時が経ち、政権の怒りを買った源氏は、無位無官となって須磨(すま)に下ることになります。

そのさい、荘園や牧場などの権利書の管理を、すべて紫の上に託しました。

さらに、実務的な事柄は少納言の乳母を見込んで指示を与え、しかるべき家司(けいし)たちを新たに付けたといいます。

源氏の厚い信頼までをも獲得した、やさしく賢明な乳母でした。

※本稿は、『美しい原文で読む-源氏物語の恋のことば100』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。


美しい原文で読む-源氏物語の恋のことば100』(著:松井健児/中央公論新社)

源氏物語の原文から、68人の人びとが語る100の言葉を厳選し解説。

多彩な登場人物や繊細な感情表現に触れ、物語の魅力に迫ります。