ヒトが消化できない物質も分解

私たちは毎日食べ物を摂取しますが、摂取したものをすべて消化し、吸収できるわけではありません。

例えば、野菜に含まれている食物繊維は、消化・吸収できません。一方で、腸内マイクロバイオータは、私たち自身が消化・吸収できないさまざまな物質を分解できます。

『「腸と脳」の科学 脳と体を整える、腸の知られざるはたらき』(著:坪井貴司/講談社)

これは、腸内マイクロバイオータが持つさまざまな遺伝子のはたらきを調べることで明らかになりました(1-3)。

腸内に棲んでいるさまざまな腸内マイクロバイオータの遺伝子の数を合計すると、約2000万個もあると見積もられています。

私たちヒトの細胞の中に保存されている遺伝子の数は、約2万2000個ですので、腸内マイクロバイオータがいかに多くの遺伝子を保有しているのかがわかるかと思います。

腸内マイクロバイオータは、私たちヒトが消化できない食べ物に含まれる食物繊維や油脂などを分解し、短鎖脂肪酸などを産生します。

肉の脂やバター、オリーブオイルや大豆油などを合わせて油脂と呼びますが、これら油脂の主成分は、グリセリンに脂肪酸と呼ばれる炭素原子が鎖状に多数つながったものです。

この炭素数が6個以下のものを短鎖脂肪酸と呼び、酢酸、プロピオン酸、酪酸などがあります。