賢い人は子どもにお金を残さない
「自分自身のためにも、そして子どものためにも、後の世代に資産を残す必要はない」というのが私の考えです。
デフレの時代が長く続いてきましたが、このままさらに10年、20年と物価や給料が上がらないとは考えにくい。インフレの時代になって目減りするリスクも考えると、今、周囲や自分のために使うほうがお金は生きるのです。
さらにもう1点。長年、高齢者の医療に携わりながら、その行く末を見守ってきましたが、お金を残すと、むしろ大きなトラブルの種になることが少なくないのです。
子どもがひとりならともかく複数いた場合、遺産が多い場合はもちろん、相続税がかからないくらいのお金であっても、相続をめぐって泥沼の揉(も)め事となってこじれていく様子を、私は幾度となく見てきました。
親が80代や90代で亡くなった場合、子どもは60代というケースが多いのではないでしょうか。60代ともなれば、すでに退職していることが多く、誰しも老後の不安から少しでも財産が多く欲しいという気持ちになるものです。