芸者歌手のスターが登場しなくなった理由

昭和30年以降に芸者歌手のスターが登場しなくなるのは、この時期に芸者とホステスとの勢力が交替したことを示している。

事実、芸者に代わって松尾和子のようにクラブシンガーからレコード会社にスカウトされる歌手が出てくるようになる。

『昭和歌謡史-古賀政男、東海林太郎から、美空ひばり、中森明菜まで』(著:刑部芳則/中央公論新社)

キングの歌手大津美子は、ビクターの作曲家渡久地政信を経て、キングの作曲家飯田三郎に師事しており、松尾のようなクラブシンガーではない。

しかし、大津のヒット曲である、昭和30年(1955)10月の「東京アンナ」(作詞:藤間哲郎、作曲:渡久地政信)、同33年(1958)4月の「銀座の蝶」(作詞:横井弘、作曲:桜田誠一)は、クラブで働く女性を主役としている。