イラスト:平尾直子
東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年。景気はどんなふうになっていくのでしょうか。今から心得ておきたい生活に直結するお金の対策を、ファイナンシャルプランナーの藤川太さんに聞きました(構成=山田真理 イラスト=平尾直子)
2020年のマネー予想 おさえておきたい8ヵ条

 1 キャッシュレス決済を導入しよう
 2 電気・ガス料金プランの見直しを
 3 格安スマホ、格安SIMを検討すべし
 4 不動産、銀行口座の整理をしよう
 5 転職・再就職はオリンピック前までに
 6 介護離職は極力避けよう
 7 働くための健康を維持
 8 元気なうちに、親子でお金のことを話し合うべし

 

払い方を変えるだけでお得になる

家計をめぐる状況は、ますます厳しさを増す一方と予想されます。そこで今すぐ取り組んでいただきたい家計のチェック項目があります。いずれもよく知っていると思われるかもしれませんが、なぜ今必要なのか、その理由もお伝えしましょう。

 

1 キャッシュレス決済を導入しよう

まず読者の皆さんにお聞きしたいのが、「キャッシュレス決済のポイント還元」を利用しているかどうかです。先日も主婦向けのセミナーで質問をしたのですが、手を挙げた人はほんの数人でした。これは非常にもったいないというか、家計を守る意識が薄いかもしれないですね。

第一の理由はいうまでもなく、2019年10月に消費税率が10%へ引き上げられたこと。これを財源とする幼児教育・保育の無償化、20年4月に始まる高等教育の無償化(大学や専門学校で学ぶ経済的に困難な学生に対する教育費支援)の恩恵にあずかれる世帯はいいですが、子育てを終えた中高年世帯やシングルの人には政策的なメリットがありません。

また消費増税の影響によって、さまざまな商品やサービスが値上がりしています。鉄道・バスの運賃や金融機関の手数料、郵便料金のほか、20年1月に大手損保会社4社が自動車保険料を約3%値上げするという発表もありました。今年相次いだ自然災害で保険金の支払いが増えたことから、今後は火災保険料の値上がりもありそうです。

また人手不足による人件費の上昇、輸送費や材料費の値上がりによって、物価そのものもじりじりと上がり続けています。それで収入が上がればまだしも、働き方改革関連法によって19年4月から大企業で、20年4月からは中小企業でも残業時間が制限され、そのぶん毎月の給与が下がってしまう家庭も多いはず。パートやアルバイトの最低賃金は多少上昇したとはいえ、今後どうなるかわかりません。

長引く不況で、切り詰められるところはすべて切り詰めていると嘆く人も多いはずです。そうした厳しい状況のなか、お金の払い方(決済方法)を変えるだけで、次回の買い物がお得になり、それが20年6月までの限定チャンスだとしたら、積極的に利用しない手はないと思うのです。

キャッシュレスとは、現金を使わずに電子マネーやクレジットカードなどで行われる商取引のこと。従来のカード形式に加え、スマホを機器にかざすだけで決済できるアプリの登場で一気に市場が拡大。「ポイント還元」は、消費増税で消費が落ち込むのを抑えるため、また海外に比べて遅れている日本でもキャッシュレス決済を促進するために、国が大盤振る舞いしている施策です。