「よく焼きだよ」
秋刀魚ミッション当日、できるだけ煙を控えめに焼くため、フライパンを用意していると、
「よく焼きだよ。わかった?」
やはり不安がぬぐえない様子で、すかさず念押しが入りました。
焼き上がった鮮度のよい秋刀魚の皮は、コートを脱ぐようにするっと剝けましたが、左右に開いた身を崩さないように骨をはずそうとすると、小骨の多さに途中で泣きそうになりました。
それでも、なんとか温かいうちに、骨なし秋刀魚を、大根おろしとカボスを添えてお皿に盛りつけることができました。
高倉は、じっとお皿を見つめたあと、覚悟を決めたように一箸目を口に運んでくれました。隣で私が食い入るように見つめている気配を察して、
「こっちを見てないで、自分のを食べなさいよ」
と笑います。場がほぐれたところで、私も食べ始めました。