「なぜ今まで頑張れたのか?」とか聞かれる

どこの集会も。わたくしは「巖は無罪だから頑張れた」と言ってるんです。そう思っています。

刑務所に48年間、おりましたでしょ。まあ、48年、3畳の狭い部屋で運動もできない、何もできないという、苦しい戦いをしていたのは巖なんです。巖に自由はありません。それこそ死んじゃったほうがいいと思った時もあったのではないかと思う。

この頃、巖を見ておりまして、どういう風に拘置所の中で生活していたのかを見て(想像して)おりますの。いい悪いではなく、長年の習慣と言いますか、鼻紙を今もきちっと折っております。10年前と変わりございません。

静岡県庁の会見でVサインをする袴田巌さん、ひで子さん、小川秀世弁護士(本書より:著者撮影)

少し物言うようになりましてね。それも夜中に私を起こすんです。「猫が腹をすかせて困ってるから、餌をあげてくれ」って言うんですよ。「ご飯をあげて」とか。

巖の子供の頃は、拾ってきた猫飼ってた。犬も拾ったりして庭で飼っていた。今みたいなカリカリ(ペットフード)とかではなく、粗末なものでも猫も犬も生活できた。

巖は揚げ物なんか買ってきて「猫の餌だ」と言ってる。毎日買って来るんです。困ってお店と交渉して返品させてもらってます。「それ買っちゃダメ」って言えないんですよ。言っても聞かない。

まあ、ともかく(巖は)元気に生きております。わたくしも91だけど割合と元気と思っている。再審開始(無罪)になることを願っていますが、9月26日にはいよいよ判決です。

判決が出たら巖にしっかり説明したいと思っております、今まで、全然説明していません、「今日は清水行ってくる」とかだけ言ってる。「留守番頼むね」というと「ああわかった」。裁判だろうなとは薄々感じていると思うのですがね。

今日は「58年前の6月30日」ということを話せばひょっとすると巖はわかるかなと思っていますが、それはわからんようでございます。

今日帰ってからも話は致しません。9月の26日までは、まあお預けということで、この裁判の話をしないつもりでございます。

今日、渡邊(昭子)さんが話してくださいます。渡邊さんは巖が青春時代、唯一、一家総出の家族づきあいしてくれた方なんです。私もここ(集会)へ来るようになってお世話になってからご主人とお会いしたこともあります。ご主人は亡くなってしまったけど奥様はお元気です。懐かしい話になると思います。