恐ろしい思いをした警察での取り調べ
巖がとっつかまって、私たち家族は、警察に連れられましてね。兄(長男)も母も嫁いだ二人の姉もわたしも。たまたま養子に行った兄(二男)は下田にいたもんですからね。家宅捜査はありませんでしたが。
わたくしの狭い6畳ひと部屋の粗末なアパートにも、朝7時ごろかなあ、警察官が4人くらい来ましてね。捜索令状って見せるでしょ。それに「袴田巖、強盗殺人犯」って書いてある。
それを見て、「これ、なんだろうなア」と思いました。何のことだろうと思って家宅捜索を受けました。
家具があるわけじゃなし、押し入れと箪笥、食器棚、冷蔵庫くらいでした。その中を(警察は)ひっかき回していました。巖がその前に来てお味噌を持ってきたんです。こがね味噌の。
それを3つか4つお勝手に置いていった。そしたら持っていくものがないから、それを持って行ったんです。なんか探してたんでしょう。
浜松中央警察署に連れていかれました。私はさっぱりわからないから怖いとも何とも思いません。取調室っていう狭い部屋に連れていかれて、私を一番奥に入れて、刑事が出れないように入り口にした。
何か質問したんですが。その質問がもうすっかり忘れておりますの。それでお昼になりまして、カツ丼取ってくれたんです。私はそれをがつがつ食べちゃったんですよ(笑)。
朝ごはんも食べてなかったんで。後から考えれば、食べなきゃよかったとも思ったんですが。まあ懐かしいというよりも、そういう恐ろしいことがありました。