うつの人には叱咤激励は逆効果

ではもし身近な人がうつになったら、あなたはどうしますか?

つい「早く良くなってね」と言ってしまう人も多いでしょう。たいてい相手に良かれと思い口にしているのですが、実はこれ、うつの人にとって一番プレッシャーになる言葉です。早く良くなりたいと誰よりも強く思っているのは本人だし、それができないからこそつらさを味わっているのですから。

同様に、「元気を出してね」「頑張って」など励まし系の言葉もよくありません。元気を出したいのに出せない、頑張りたいのに頑張れないのがうつという病気なのです。

そのほかにも、不用意にかけた言葉が本人を追いつめてしまうことがしばしばあります。たとえば「前はあんなに元気だったのに」「前と同じように元気になってね」といった、以前との比較。うつのときはポジティブに受け止めることが困難ですから、こうした言葉は「ああ、やはり今の自分はダメなのだ」と、自己嫌悪を深めて落ち込む引き金に。

また「前の自分に戻る」こと自体、私はお勧めしません。前の自分に何らかの原因があったからこそ、うつになったとも言えるわけです。むしろ、以前の自分がどこかで無理をしていたことに気づき、これを機に新しい自分になるほうが望ましい。

また、批判されたり解決策を提案されたりするのも、うつの人には苦痛です。「そんなの気の持ちようだよ」「あまり思い詰めないほうがいいんじゃない?」「もっとプラス思考でいこうよ」などなど、「自分ならこうする」という考えに立った助言は、マイナス効果しかありません。

単に「元気のない人」には叱咤激励やアドバイスも有効ですが、「うつの人」には逆効果となります。