〈別居家族、友人、同僚の場合〉

むやみに元気づけようとせず、さりげない物理的な支援を

同居する家族ではなく、別所帯の親や兄弟姉妹、あるいは友人、職場の同僚などがうつになった場合はどうでしょうか。

これもまた、基本は家族への対応と同じです。むやみに励まさず、腫れものに触るような扱いをせず、普段通りにつきあうのがベスト。

前述したように、うつは気分だけでなく実際にだるくて動けない、などの身体症状も伴います。日常生活が滞ってしまうのですから、むやみに元気づけようとするよりも、さりげない物理的支援をするほうが、本人にとってはずっとありがたいもの。

たとえば買い物に行くついでに、何か必要なものがあったら買ってきてあげる。ゴミの日に、自分の家のものと一緒についでに捨てに行くよ、と声をかける。どこかに連絡する必要があれば、代わりに連絡してあげる。日常的に相手の家まであがれるような関係なら、洗濯物の取り込みとか、ちょっとした家事を手伝う。日ごろのつきあい方に応じて、いろいろな手助けの方法があると思います。

この場合は、「何か必要なことがあればやるから、言ってね」と、さりげなく申し出ることがポイント。LINEなどを活用して声をかけてもいいかもしれません。

注意点としては、たとえ相手が一人暮らしであっても、「私が何かをやってあげなきゃ」と自分を追い込まないこと。あまり気負わず、相手が必要なときに行って、やってほしいことだけをやってあげる。その際、自分にできること、できないことをきっちりとふるい分けておいたほうがいいですね。

たとえば話を聞いてほしいと言って、うつの友人からしょっちゅう電話がくるとします。いちいち全力で応えては自分の生活に支障をきたしますし、精神的にも負担が大きい。無理をすると長続きもしません。

そんなときは「毎週○曜日の×時から×時までなら空いているから、何かあったら電話して」とか、最初に「今日は何時までしか話せないけど、いい?」とある程度時間を決めておくといいでしょう。

 

ちょっとした手助けが求められている

身近な人がうつになると、「何とかしてあげたい」と、つい思ってしまいます。しかし、あなたはうつ病の専門家ではありません。相手の気持ちに「寄り添わなければ」と過剰に思いやることはないのです。それよりも、相手はどうしてほしいのか、ほんの少し想像してみることが大切です。

たとえば自分が風邪で寝込んでいるときのことを想像してみてください。「励ましてくれなくていいから、ホットレモンを作ってほしい」と思いませんか。食器洗いや洗濯をしてもらったらすごく助かりますよね。そんなちょっとした手助けが、一番求められているのです。

うつはときに自殺にも繫がることのある病気です。家族や周りの人が、「自分の力でなんとかできる」とは決して思わないでください。身近な人がうつではないかと思ったら、早めに専門家へ相談を。今はいい薬もありますし、適切な治療をすれば必ず良くなります。