健康な人との大きな違いを理解する

では、この両者をどう見分けるか。いくつかのヒントがあります。

うつの三大特徴は「睡眠」「食欲」「気分」に変調をきたすこと。

うつになると、まず睡眠の質が悪くなります。寝つけない、早朝に目が覚める、もっと眠りたいのに眠れない、熟睡感がない。

二番目は食欲の変化。大きく分けると、食べられずに痩せていく場合と、過食になって炭水化物ばかり食べるようになるケースとがあります。

三番目の気分の変化にはいろいろなパターンが。落ち込み、おっくう、だるい、やる気が出ないなど。ひどくなると、だるくて本当に体が動かず、起き上がることさえできなくなります。風邪をひいて高熱が出ると、体がだるくて起きられなくなる状態と同じで、動きたくないというより、体を動かせないのです。

もちろんどんな人でも、気分が落ち込むことはあります。食欲のわかない日もあれば、眠れない夜だってあるでしょう。しかし健康な人の場合には、必ず波があります。すごく落ち込んだけど何かをしたら少しは気が晴れたとか、2日よく眠れなくても3日目にはぐっすり眠れたとか。

ところがうつ病の場合、気分や睡眠の不調が、たとえば10がベストだとするとゼロという状態のまま、まったくよくならず2週間以上続きます。ただ、同じうつでもうつ病とほかの疾患によるうつ状態とでは多少症状は異なります。適応障害によるうつ状態の場合は、落ち込みというよりイライラがひどいような場合も。

気分が落ち込む、食欲の低下あるいは過食、睡眠障害、という3つがそろって2週間以上続く場合は、「単に元気がない状態ではない」と考えたほうがいいです。こういう状態の人が、「気分が落ち込むことなんて、私もあるよ」と励まされても、自分のつらさは理解されないんだという絶望感を深めるばかりです。

では、どう接すればよいのか。

まず、どんな関係の相手であれ、「特別なことを言ったり、したりする必要はない」というのが基本です。具合が良くなってほしいという思いを心に秘めながら、普段通りに接すること。相手を思いやる気持ちはおのずと言葉や態度に表れるので、それで十分。というよりも、それがベストなのです。