うつで苦しむ人に「頑張って!」はNG、では「早く良くなってね」は──? 周囲の人の態度や言動が症状に影響を与えてしまいがちだからこそ、何度でも確認したい「対処」と「声かけ」。その基本を、心療内科医の海原純子さんが教えます(構成=古川美穂)
気づいたらうつになっていた
うつ病の患者さんは年々増加しています。世界でうつ病に苦しむ人は推計3億2200万人(2015年)で、全人口の約4%。うつ病による自殺者は年間約80万人にのぼります。わが国にも約506万人の患者さんがいると言われており、うつは決して特別ではなく、風邪のように誰もがかかりうる病気なのです。
産業医として患者さんを診ていると、この数年は職場で限界まで追いつめられた男性のうつが目立ちます。中間管理職などけっこう上のポストの方でも、リストラで人が減ったぶん自分の仕事量が増え、キャパシティを超えても仕事を断ることができない。NOと言えば今度は自分もリストラの対象にされてしまう。逃げ場のない状態で、にっちもさっちもいかず、気がついたらうつになっていた、という方が業界や職種にかかわらず多いように感じます。
女性の場合は、48、49歳ぐらいの年齢の方が、いろいろと曲がり角を迎えているようですね。妻や母としての仕事が一段落して新しい人生へと転換を図らなければいけないのに、どちらに進んだらいいかわからない。もう若くないし、更年期も重なり、壁にぶつかってうつになる人も。
また、男女ともに60歳から65歳ぐらいは「初老期うつ」といううつ病にかかりやすい年代です。