幼なじみ物語
この作品はノエチとなっちゃんによる幼なじみ物語でもある。これも身近に感じさせる理由となった。幼なじみのいない人はまずいない。
もっとも、現実の幼なじみとの付き合いは大人になるに連れて途絶えてしまいがち。家庭を持ったり、仕事が忙しくなったりするからだ。
しかし、ノエチとなっちゃんは大学非常勤講師と売れないイラストレーターで、ともに自由になる時間が多く、加えて独身同士ということもあって、親密な関係が継続できた。今もお互いに夕日野団地内に住んでいることも大きい。もちろん、波長も合った。幼なじみとしての2人の関係も理想的だった。
夕食をなっちゃんの住居で毎夕のように共にしたり、そのまま映画を観たり、近所の釣り堀に行ったり、身の回りのことを何でも語り合ったり。観る側が惹かれるはずである。
第2回では夕日野団地内には2人のほかにも幼なじみがいたことが分かる。優しくて花が好きだった空ちゃんだ。3人は幼稚園のころから大の仲良しで、いつも一緒にいた。夕日野団地の敷地内でこっそり猫も飼った。
しかし、空ちゃんは小学校に入るころから体調を崩しがちとなる。ノエチとなっちゃんは病名を知らなかったが、小児がんだった。
ノエチとなっちゃんは入退院を繰り返す空ちゃんを励まそうと、3人で飼う猫を抱いてお見舞いに向う。しかし、病院内に猫を入れることは出来ない。2人が途方に暮れてから間もなく、空ちゃんは帰らぬ人になってしまった。
「泣いたね。こんなに泣けるのかと思うくらい泣いた」(ノエチ)
「泣いたね・・・」(なっちゃん)
同じような体験をした人もいるだろう。そうでなくても幼なじみは特別な存在だから、2人の切ない思いは伝わってきたはず。近年のドラマが幼なじみの存在にフォーカスを合わせることはほとんどないから、なおさら胸を突いたのではないか。
幼なじみ3人の思い出はなるべく直接的表現を避け、観る側の想像力に委ねられた。この演出により、視聴者側はまるで自分の身辺で過去に起きた話のように思えた。秀逸な演出だった。