あってはならない恋の道

王命婦(おうみょうぶ)という女性は、源氏と藤壺(ふじつぼ)の仲立ちの女房です。

しかし、源氏と血のつながりはないものの、藤壺は桐壺帝(きりつぼてい)の妻です。あってはならない恋の道です。

『美しい原文で読む-源氏物語の恋のことば100』(著:松井健児/中央公論新社)

それでもなおこの二人の恋の導き役となったのですから、王命婦は、藤壺からも源氏からも、ともに深い信頼を得ていたことが想像されます。

王命婦はその呼び名に、王の文字を持っていますから、おそらく皇族の血筋を引く女性であることがうかがえます。

藤壺は、先に帝であった方の4番目の姫宮であり、源氏は桐壺帝の第二皇子(おうじ)です。

二人が属していた皇族社会の内側にいて、その内情や、人の心の動きもよく察することのできる女房だったのだと思われます。