源氏の向こう見ずな自信
ところが不思議なことに、朧月夜はこの声を聴いて、少し気持ちが静まったと語られているのです。
朧月夜は、この日の桜の宴で、源氏が自作の漢詩を披露する、声と姿に接していたのでした。
暗闇のなかで間近に聴いた声は、昼の光のなかで聴いた、まさに憧れの人のものだったのです。
源氏の言葉は、このときの源氏でなければ言えないような、向こう見ずな自信にあふれています。
世間知らずな青年期だからこその傲慢さですが、そうした若さが、このうえなく魅力的に語られているのがこの場面だといえるでしょう。