台本を読みびっくりしたシーン
<『源氏物語』では、光源氏と藤壺は男女の関係になる。『光る君へ』の敦康親王は彰子より10歳年下。「もしかしたら」「一線を越えてしまうのでは」と見るものの心をざわつかせる場面がある。第39回では、元服前日、挨拶に訪れた敦康親王と彰子の様子を見て、道長が「もはや危ない。光る君の真似なんぞされては一大事」と警戒したほど。第41回。彰子から手紙をもらった敦康親王が飛んでくる。「せっかく参りましたのにお顔が見えませぬ」と御簾を押しのけて彰子に近づく――。あの時代、普通では許されないことである>
僕は、敦康親王が御簾を超えて彰子に近づく場面に思い入れがあります。台本を読んだ時には「超えた!」とびっくりしました。御簾を超える瞬間は、御覧になっていだけると分かると思いますが、「うわあ」という感じ。その場にいたまひろや藤原行成(渡辺大知さん)でさえ、「え?!」となるみたいなシーンです。
そして「光る君のようなことはいたしませぬ。ただお顔が見たかったのです」という一言。本当に純粋なのです。飾ることなくずっと一心に生きてきて、誰より信頼している人、ある意味愛している人に御簾越しで会わなくてはならない現実をつきつけられたのがきつかったのだと思う。元服して離れなくてはならなくなったけれど、ひたすら大事な人の顔を見たい一心で御簾の中に入り「お顔を見たかっただけです」。彰子の顔を見てほっとする純粋な気持ち。僕は、その言葉通りに純粋にストレートにやりたいと考えていたので、自然に演技ができました。
彰子の見上さんのお芝居も、目を見た時にやさしさが伝わってくる。それにお応えするだけでした。見上さんが演じられた彰子のやさしさすべてに受け止めて頂きました。