【争いの種2】親から援助を受けたきょうだいがいる
これまで相続をめぐるたくさんのきょうだい間トラブルを見てきましたが、つまるところ原因の多くは「親にある」と私は考えています。
その最たるものが、特定のきょうだいへの資金援助です。たとえば大学の授業料や結婚資金の援助、自宅の購入資金の贈与などが考えられます。
最近よく聞くのが、相続税対策として、贈与税がかからない「年間110万円までの金額」を子や孫に暦年贈与したことで起こるトラブルです。たとえば孫に贈与する場合、長女の子どもが1人なら年間110万円、次女の子どもが3人なら年間110万円×3=330万円。これを3年続けたら、「次女の家は660万円も多くもらっている!」という不満が生まれます。
私は常々、「相続は気持ちが8割、お金が2割」と言っています。多くの場合、お金が欲しいというより、親からの扱いの差に怒っている。これまで抱えていたきょうだい間での不公平感が親の死後に噴き出し、「あなたはあのときいくらもらった」「それを言うなら姉さんだって」と言い争いになるのです。
相続の際に生じる不公平感を減らすための制度が、ないわけではありません。特定のきょうだいが生前に受けた「特別受益」を遺産に計上し直したうえで、均等になるよう遺産分割することは可能です。しかし私の長年の経験則では、1人がこれを言い出せば、遺産分割協議は確実に頓挫します。最終的に調停まで持ち込むことになりかねず、おすすめはできません。
私がいつもお伝えしているのは、子どもや孫に資金援助や暦年贈与をするときは、「何月何日・誰へ・いくら贈与したか」を一覧表にしたうえで、それを家族で集まった際に共有してほしいということ。さらに「この金額を参考にして遺産分割を考えてほしい」と親が口頭で伝えておけば、子どもたちも準備しやすいでしょう。
あるいは、「次女は地元に残って墓守りや法事の施主をしてくれるのだから、その分多めに渡したい」という親の言葉があると、長女も納得しやすいかもしれません。