【争いの種3】特定の人だけが親の介護をしていた

整備された制度にもかかわらず、使う人が非常に少ない「寄与分の請求」。これは「亡くなった人の財産の維持や増加について特別の寄与をした相続人」が、ほかの相続人より多くの財産を相続できる制度です。

親の家業を無給で手伝っていた、介護を献身的に続けていた――などの場合に請求できます。2019年の民法改正で、長男の妻など相続人以外の親族による請求も認められるようになりました。

この制度は、親の世話や介護で自分の生活を犠牲にせざるをえない人を救済するために作られたものです。ただ実際のところ、ほかの相続人と争うので人間関係がギクシャクするのは明らか。それを承知で請求しようと思うでしょうか。現場を知る私としては、はなはだ疑問なのです。

前述の「特別受益」と同じく、法的に争って遺産分割協議を長引かせるよりも、「姉さんは介護を一所懸命やってくれたから、お母さんの遺産からいくらか譲ろう」という思いやりを大切にしたほうが、その後も円満な関係が続くのではないでしょうか。

あるいは親に、「介護をしてくれた長女には多めに財産を分けたい」と、ほかのきょうだいより多く相続させたい理由を遺言書に明記してもらうのもいいと思います。