(c) 映画『ぼけますから、よろしくお願いします。~おかえり お母さん~』

さらなる奇跡が

言葉を変えれば、母は危篤になるのを、私たちが面会できる日まで待っていてくれたのです。これが前日だったら、面会できないまま永遠にお別れだったかも……と思うと、母の執念とも思える頑張りに圧倒されました。

そして、慌てて駆けつけた病院では、さらなる奇跡が……。

父が2か月半ぶりに、

「おっ母、わしじゃ。わかるか?」と

声をかけると、それまで弱々しかった母の心電図の波形が、再び大きく力強く、波打ち始めたのです。

「ありゃあ、お父さんが来たら、お母さん急に元気になっちゃったが!」看護師さんも思わず歓声を上げたほどの、奇跡の復活でした。

後編>につづく

 

※本稿は、『あの世でも仲良う暮らそうや 104歳になる父がくれた人生のヒント』(文藝春秋)の一部を再編集したものです。

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あの世でも仲良う暮らそうや 104歳になる父がくれた人生のヒント』(信友直子/文藝春秋)

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