2か月半ぶりに夫婦再会
前日の14日には、父と私で最後の面会に行き、「明日からはしばらく会えんのよ」と念押ししましたが、母は認知症のせいで覚えていられなかったはず。
きっと「何でお父さんは来んようになったんじゃろうか」と毎日考えたと思うんです。「具合が悪うなったんじゃろうか? それとも私のことを忘れてしもうたんじゃろうか?」と。
面会禁止は2か月半に及びましたから、その間母は、ずっと父のことを案じていたはずです。そして遂には諦めたんじゃないでしょうか。
「こうに長い間来んのなら、お父さんはもう、おらんようになったんじゃろう」と。そして自分自身も生きる気力をなくしたのではないかと思うのです。
母が危篤状態に陥ったのは、6月1日のことでした。
この日はちょうど、5月末の緊急事態解除宣言を受けて、病院での面会が再開された日でした。私たちは午後2時から15分間、2か月半ぶりに母と面会できることになっていました。
久しぶりに母に会うからと、父は朝からお風呂に入ったり、髪を何度も梳(と)かしたりとそわそわ。ほほえましく見ていると、11時頃、病院から電話がかかってきたのです。
「お母さんの呼吸が弱くなっとられます。面会時間まで待たんでもいいので、今すぐ来てください」