「道長対まひろ」
━━道長の出家に際し、柄本さんも実際に髪を剃ってどんな感じですか。
これまで長い髪を結って烏帽子を被っていたのですが、前から髪を剃ることは考えていました。
髪を剃っている時、初めはなんということはなかったのですが、手の甲に髪がバサッと落ちた時は、剃髪をしているのだと実感して、グッとくるものがありました。
うちの奥さんも髪が長い時があり、髪を洗ってからドライヤーで乾かす時、一気に全部乾かせば良いのに途中でやめてテレビを見たりしている。それって、長い髪を全部乾かすのに、腕が疲れるのですね。僕は髪を剃ってみて楽だと分かり、ずっとこのままでいたいと思いました。
ただ、剃った後に急に気温が下がり、そのまま生活をしていたら、剃って4日目くらいに風邪気味になり、慌てて自分を温めましたよ。(笑)
━━まひろと道長の関係で心がけていたことはありましたか。
まひろの出番が短い回もあるのですが、その存在がいつもあるのは、吉高さんの俳優としての大きさだと思いました。
道長にとっては、いつも「道長対まひろ」なのです。大石先生が脚本でそう目論んだのだと思いますが、まひろがいると道長は周りの人が見えなくなる。「まひろとその他大勢」になってしまう。
第36回の「五十日の儀」で、道長はまひろに歌を詠むように命じ、返歌をする。その息の合った二人の様子を見た倫子が不愉快になり席を立ってしまった。道長は、倫子の気持ちも分からずに、「なんで?なんで?どうしていなくなるの?」と思い、倫子を追いかける。道長は人前で、まひろとの仲を悟られるようなことをやらかしてしまったのに、全く気づいていないのですよ。まひろがいると他が見えなくなるという感じは、出していこうと心がけていました。
━━藤原行成(渡辺大知さん)、倫子、もう一人の妻の明子(瀧内公美さん)など道長を取り巻く人たちも大変ですね。
嫡妻の倫子は仕事仲間、もう一人の妻の明子は仕事に疲れた時のオアシス的存在です。結局どちらともうまくいかず、道長は、二人のどちらにも行かず、内裏で寝ている時もある。(笑)
行成には、いつも自分の役に立ってもらい、苦労をさせて気の毒なことをしているなあ、と思いながらやっていました。