時事問題から身のまわりのこと、『婦人公論』本誌記事への感想など、愛読者からのお手紙を紹介する「読者のひろば」。たくさんの記事が掲載される婦人公論のなかでも、人気の高いコーナーの一つです。今回ご紹介するのは山形県の40代の方からのお便り。「公民館まつり」で買った布草履を愛用して1年。今年も買おうと、足を運んだところ――。
足もとの革命
家にいるときは、素足に布草履を履いている。市販ではなく、木綿の布で織られた手作り。靴下が苦手でスリッパを履いていたのだが、この布草履に出合って私の足もとに革命が起きた。
昨年の春、近くの農村集落で開催されていた「公民館まつり」に出かけたときのこと。各種の手作り品の展示即売会が行われていた。そこで素敵な布草履を売っているのが目に留まり、試着させてもらったのだ。
布草履といえばごわごわしているイメージだったが、これはとても肌触りがいい。それにクッションのよさもたまらない。製作者はA子さんという、かなり年配の方。履き心地に感動している私に、「足になじむにつれて、さらに履きやすくなるよ」と、にこやかに教えてくれた。
さまざまな柄の布で織り上げてあるので、模様はなかなか賑やかだ。外に履いていくものではないから、多少派手でも自分の気分が上がるものをと、かわいい柄のものを選び、家へ連れて帰った。
そんな布草履を愛用して、もう1年が経つ。A子さんの言っていた通り、履くほどに足になじむ。布草履の魅力を知ってしまった今では、とても以前のようにスリッパを履こうという気は起きない。
恒例となったらしい「公民館まつり」に、今年も出かけてみた。しかし、会場にA子さんの姿はない。どうしたのだろうと周りの方に聞いてみると、つい1ヵ月前に亡くなったそうだ。昨年会ったときはまだまだお元気そうだったのに……。
作ってあった布草履であろうか、申し訳程度の数の作品が、寂しく展示されていた。