恋愛にトラウマティックな体験があるという筋書き
このドラマには、他にもフェミニズム要素が随所に散りばめられていたり、問題提起されているドラマだと思う。しかし、ひとつ、どうしてもひっかかることがあった。
涼の母親・町田満美(坂井真紀)は恋愛体質で、常に男性に依存しているタイプ。しかも、国際ロマンス詐欺に引っかかり、涼が妹のために消費者金融から借りたお金を、相手の男性に送金するために盗んで姿を消してしまうのだ。
涼が、母親に激昂するシーンがある。
「ママみたいに男がいないと生きていけない惨めな生き方は私はいっちばんいや」
このシーンを見て、正直すごくがっかりした。
最近では、恋愛や結婚、性のあり方の多様性を尊重しようという動きも広まり、もれなくドラマにもその潮流は来ており、恋愛しない人が登場するドラマも増えた。
しかし、毎回引っかかることがある。
恋愛しない人が、恋多き母親に振り回され、トラウマティックな体験があって、恋愛嫌いになってしまった、という筋書きが少なからずあるのだ。
『恋なんて、本気でやってどうするの?』というドラマでは、主人公が恋をしないと意固地になっており、周囲から高齢処女、早くそこら辺の男と寝ろ、とそそのかされ、結果恋愛に溺れていくというストーリーだった。
そもそも、恋愛しない、というポリシーを、恋に溺れる前振りに使うのが本当に無神経だと感じた。もちろんそういう人も実際いるだろうが、恋をしない人たちは、恋愛しないと打ち明けても、「まだ出会ってないだけだよ」「これから好きな人に出会ったら変わるよ」という言葉をよくかけられる。善意なのかもしれないが、恋愛しないのは人として完全ではない、と言われているような気がする。恋愛しないままでいい、このままでいいと受け止めて欲しいのだ。