松の枝を愛でる村雨さん

高校時代に初来日「すぐにでも日本で働きたい」

初めて日本を訪れたのは、16歳の時です。高校の夏休みを利用して3ヵ月間、インターネットで知り合った人の家に泊まらせてもらいました。

なにしろ自分の国を飛び出したくて。僕はスウェーデン南部の出身なのですが、当時は田舎町特有の世間の狭さが嫌だった。刺激がほしかったんです。だから、距離的にも、文化的にも、なるべく遠い国を求めていました。そこでアジアに目を向け、中でも日本に興味を持つことに。

『僕は庭師になった』村雨辰剛・著

ホームステイは横浜だったので、鎌倉が目と鼻の先。伝統建築や庭を、しょっちゅう見に行っていましたね。日本文化について知るには3ヵ月ではとても足りません。すぐにでも日本で働きたい。はやる心をおさえて、向こうの高校を卒業した後、19歳の時に再来日。最初は名古屋で語学関係の仕事に就き、スウェーデン語と英語を教えていました。

4年ほど経った頃、気づいたんです。僕はずっと「できる」仕事ばかりしてきた。でもそれは「したい」仕事じゃない。日本文化への憧れはどこに行った? どうにかして伝統文化に関わりたい。そう目標を定めました。

僕はもともと東洋建築に興味があったので、最初に考えたのは宮大工。でも宮大工は専門的すぎて、23歳から挑戦するのは現実的に厳しかった。ある時、求人誌を眺めていたら、県内の造園所がアルバイトの募集広告を出していて。造園とはなんだろう? 日本庭園を造る仕事らしい。そういえば、日本庭園ほど日本らしいものはないんじゃないか? よし、やってみようと。