「私がなすべきことは何かと考えますと!」

続けて「お言葉ながら藤原を描くなら、大化の改新から書きたいくらいにございます。とはいえ、それでは太閤様の御代まで私が生きている間に書ききれないと存じまして宇多の帝からにいたしました」と熱弁しました。

対して「殿が生まれた時は村上の帝のときゆえ…そこからでよいのではないかしら?」とにこやかながら食らいつく倫子。

しかし、それを聞いた赤染衛門はますます表情をかたくします。

そして「『枕草子』が亡き皇后定子さまの明るく朗かなお姿を描き、『源氏の物語』が人の世のあわれを大胆な物語にして描いたのなら、私がなすべきことは何かと考えますと! それは歴史の書であると考えました」と堰を切ったように話し始めます。