「数日前、写真データを整理し、約12年分のベニシアの写真を見たんです。『俺、こんなにたくさん撮ったのか!』と驚きました(笑)。施設に入ってからの写真はつらくて見られないんですが、それ以外は、どの時期も、病気になった後ですら楽しそうに生き生きと笑っているんです。
僕はいい夫じゃなかったけど、もしかしたら二人で過ごし、二人で何かを作る時間は彼女も楽しかったんじゃないか。僕もずっと幸せでしたから」
介護を通じて学んだことも多い。「自分のためじゃなく、人のために生きて初めてわかることがあると知りました。ベニシアが身をもって教えてくれたんです」。そう言うと梶山さんは初めて見せる涙をぬぐった。
「ベニシアは、スペインの巡礼路(サンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路)を二人で歩きたいと言っていました。僕も、『いいね。スペインなら英語の苦手な僕も仲間はずれにならないし』なんて答えて(笑)。歩きたかったですね。そして73歳のベニシアの笑顔を撮りたかった」