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Oラインに挑戦

しかし、一発当てたくらいでやめるなんてもったいない。その後も汗だくになりながら、左足、右足とおっぴろげながら、左手、右手あっちこっち抑えながらバチィィッッ、バチィィィッッッと照射していく。保冷剤がぬるくなると、こんなんじゃ痛いかもしれないと心配になり、下半身まるだしのまま、すぐ冷え冷えの新品に取り替えに行く。あそこはキンキン、体は汗だくだ。

まてよ? もし今、強盗が入ってきたらどうしよう。こんな姿を見られるくらいなら舌を噛み切って死にたい。いや、そうするとその後警察に遺体が運ばれていろいろ調べられて鑑識に回されて、石原さとみ(編集注:テレビドラマ「アンナチュラル」で法医解剖医役を演じる)みたいな人に「Iラインがちょっと腫れてる……この人まさか平日の昼間に脱毛したんじゃ?」ってバレるのでは? いや、サングラスに下半身まるだしの時点で鑑識回さんでも発見時に秒で分かる。そんな死に方、親族も悲しむに悲しめない。

……なんとか早く終わらせなくては!

勢いそのままにOラインに突入だ。皮膚の硬さで考えると、もうIラインほどの恐怖心はない。しかし、誤算だった。Oライン……自分じゃ全く見えない。手探りで保冷剤を当てることはできる。でも脱毛器のヘッドの照射部分が、いったい肛門のどこらへんに当たっているか全く分からない。この恐怖といったらあなた、Iラインの比ではないのよっ。こうなったらもう鏡で見るしかない。幸い、ここはお風呂場。大きな鏡がある!

どうやったら施術部が一番見やすいか、いろいろな体勢を試した。汗だくだし、いろいろと邪魔になり、とうとう上半身も脱ぐことにした。汗だくの素っ裸に黒いサングラスのみ。正真正銘、変態だ。しかし強盗がいつ来るか分からないのだから、早く済ませなきゃいけない。

スタイルのおかしさなんてもう気にしていられない。とうとう見つけたベストポジション。鏡へお尻を向けた、四つん這い状態がベストだ。左手に保冷剤、右手で脱毛器を股の下からくぐらせて、目指すは鏡に映る自分の肛門!

それいけー! バチィィィッッッーー!

素っ裸にサングラス一丁で、四つん這いになり、汗だくでヒイヒイ言いながら小一時間、自分の肛門に向き合った。決して冷静になるまい。俯瞰で見るまい。この姿を決して後から思い出すまい。心を鬼にして戦い切った。

私は燃え尽きた。強盗も来ることなく施術を終え、無事服を着ることができた。初夏の平日のことだった。