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noteが主催する「創作大賞2023」で幻冬舎賞を受賞した斉藤ナミさん。SNSを中心にコミカルな文体で人気を集めています。“「愛されたい」が私のすべて。自己愛まみれの奮闘記、笑い飛ばしてやってください”という斉藤さんによる、すべてをさらけ出すデビューエッセイ集『褒めてくれてもいいんですよ?』より一部ご紹介します。

若い頃に脱毛をしたけれど

若い頃、ひと通り脱毛した経験がある。脇、V、I、Oライン、足、腕、ほぼ全身で200万円ほどかかったと思う。あの恐ろしい場所、エステサロンで。

少なくともその店舗は、会話下手である私が訪れてはいけない場所だった。スタッフの女性に「今日はお休みですかぁ~ん? お仕事何されてるんですかぁ~ん?」と怒涛の営業トークを浴びせられるのをひたすらかわし続けなければ施術してもらえない。

私も元美容師として、接客の一環で会話しなければいけないスタッフの苦労、大変さは分かっているつもりだ。しかしそれでも、である。毎回違う人にあたるので相当な労力を使って交わしたはずの前回の世間話も問答無用でリセットされ、また最初から同じ話をさせられるときの絶望感ったらない。カルテに書き込んでおいて世間話を引き継ぐシステムとかないのか。

紙クズみたいなパンツを穿かされて、あんなにえげつない部分を、ガバーッと開かれたり、グイーっと引っ張られたり。それを若い綺麗な女の子にしてもらうという、さらなる罪悪感。きわだつ屈辱感。この上ない情けなさ。

しかし、あの苦行に耐えてまで消し去ったはずのムダ毛たちは、子どもを産んで育てているうちに、なんとまたもや生えてきているのだ。

お気に入りの下着を穿いたところで、繊細なレースの隙間からはみ出て、すべてをぶち壊す、ものすごい存在感のあいつら。背中に太ももに、昔からずっと変わらずビッシリと張り付いてるあいつら。足の指にかわいくペディキュアしたって、その麓にひょろっと伸びる、やけに濃く強そうなあいつら。