成功した大城・岸田・小林の正捕手争い

では、私が注目していた新生・阿部巨人はどうだったか。日替わりでなんとか前半戦をトップで折り返したが、先述のように4位・阪神までのゲーム差は3.5。首位争いに残っていたのは、巨人が強くなったというより、これまでが弱すぎたのだ。

新監督の阿部は目先の白星を追って苦労したようだが、私に言わせれば、巨人はこれまでに蓄積された戦力があれば今年もダントツの独走でなければおかしい。

(写真提供:Photo AC)

それでも、新監督になって変わったことがないわけではない。前年までの原辰徳監督は「打てる捕手」を求めて大城卓三ばかり使っていたが、今年は序盤からバッティングのいい岸田行倫と、インサイドワークと強肩のある小林誠司にもチャンスを与えて正捕手の座を競わせた。

私は原監督の時代から、「キャッチャーの役割は打つだけではない。一番大事なのは投手を育てる能力だ」と主張してきた。たしかに小林はもう11年目のベテランで、打率が2割に届いたのは2019年が最後。原時代最後の2023年は21試合出場で打率.125だった。

「これでは使えない」という声は多いだろうが、守りの能力が高い小林が打てないのなら、打撃コーチが打てるように教えたらいいではないか。小林だって、2019年シーズンは92試合に出場し、打率.244の成績を残している。

岸田も社会人野球の大阪ガスから入団して6年目の28歳で、打力は一定の評価があったが、これまでの最多出場は2023年の46試合だった。