大リーグ挑戦の菅野は自然の原理を忘れるな
その菅野が10月5日、突然「大リーグ挑戦」を表明した。シーズンオフに海外フリーエージェント(FA)を行使して大リーグ移籍を目指すという。
以前から大リーグ移籍を希望していた菅野は2020年オフ、球団を通じてポスティングシステム(入札制度)の申請を行ったことがある。2021年元日に渡米して、代理人を通じて複数の球団と交渉を進めたが、1月8日の交渉期限切れを前に交渉を打ち切り、メジャー移籍を断念したのだ。
私は以前から、日本球界の「財産」が高額の契約金や日本の球団に入る譲渡金でアメリカに流出するポスティング制度に反対してきたので、当時も「菅野は日本野球のために巨人に残るべきだ」と著書に書いた。
当時の報道によると複数の球団が交渉に乗り出していたが、菅野の希望条件に合わず、交渉から撤退したという。当時31歳で、投手としてはすでに下り坂だったので、「巨人に残留したのはよかった。このままアメリカに行ったら大失敗していただろう」と思っていた。
その3年後の2024年、たしかに菅野は阿部巨人優勝の原動力になった。巨人投手の通算勝利数136は江川卓を抜いて歴代10位である。
投球技術は円熟味を増したかもしれないが、体力は確実に減退している。若さと将来性を投資の条件とするメジャーの査定は前回より厳しくなるはずだ。
私の意見は前回と同じだから繰り返さないが、菅野には「人間は歳とともに衰える」という自然の不変の原理を忘れないでほしい。
※本稿は、『阿部巨人は本当に強いのか 日本球界への遺言』(朝日新聞出版)の一部を再編集したものです。
『阿部巨人は本当に強いのか 日本球界への遺言』(著:広岡達朗/朝日新聞出版)
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