イラスト:めぐろみよ
姿勢が崩れてくると、背中や腰に負担がかかります。重力から体を解放し、呼吸を整えましょう。理学療法士の乾亮介さんに「うつぶせ」になるメリットについて聞きました。(イラスト=めぐろみよ)

筋力に頼らず姿勢を伸ばす

私は理学療法士として、さまざまな症状を抱える患者さんと接してきました。そのなかで、誰でも簡単にできて、最も効果のある方法のひとつとして「うつぶせになること」をとても大切にしています。

「え、うつぶせになるだけ?」と、驚かれる方も多いと思います。しかし、実はうつぶせ姿勢は理学療法では一般的なもの。「腹臥位(ふくがい)療法」といって、リハビリの現場ではよく用いられる体位です。この体勢になると体をまっすぐに伸ばすことができる。すると姿勢が改善し、体のあらゆる不調に効果があることがわかってきたのです。

背骨はもともと、曲がりやすく伸びにくいという特徴があります。そのうえ、日常の動作は前かがみになるものばかり。

姿勢をよくするには、腹這いになって上体を持ち上げることで背筋を鍛える必要があります。しかし歳を重ねると、そもそも伏せる体勢がつらいという方が多い。なので、まずはうつぶせになることから始めるのです。

うつぶせになると、重力により背骨やお腹、股関節の前面をラクに伸ばすことができる。さらに背中が解放され、背面の肋骨も広がりやすくなる。また重力によって内臓がお腹側に下がり、横隔膜が動きやすくなります。結果として肺が膨らみ、自然と深い呼吸ができるのです。

呼吸が深くなれば、リラックスでき、体の緊張もやわらぎます。すると可動域が広がり姿勢が改善するので、肩こりや腰痛、歩行困難、冷え症、自律神経の乱れ、不眠など、体のさまざまな不調に良い影響がもたらされる。また、うつぶせは医療現場では、痰を出しやすくし、誤嚥を予防する体位としても有効とされています。

歳を重ねると、いきなりうつぶせでの背筋トレーニングや、ピラティスなどを始めることは難しい。一方で介護予防関連のエクササイズは座ってやるものが中心で、うつぶせは忘れられがち。

まずは30秒だけでも腹這いに寝そべることから始めましょう。慣れてきたら、毎日寝る前や朝起き上がる前の1分間など、好きな時にうつぶせになってみてください。

ただし、体の負担になる場合があるので、この姿勢のまま眠ってしまわないように注意しましょう。