川崎市周辺の再開発

こうした構造的な副作用は日本全国の市町村に共通する問題ですが、ここでは川崎市を例に考えてみましょう。

川崎市では、これまで武蔵小杉などの川崎市南部の工場跡地等の再開発などでタワーマンションが林立しました。今後はさらに、市北部の麻生区や多摩区でも再開発の計画が浮上しています。こうした再開発の計画を進めていこうという地域は、自治体が策定する「都市再開発の方針」といったマスタープランの中に位置づけられる必要があります。

実際に、川崎市の「川崎都市計画 都市計画区域の整備、開発及び保全の方針の変更等の素案について」(2024年4月)を読み解くと、下図表に示すとおり、今後、新百合ヶ丘駅周辺地区、虹ヶ丘2丁目地区(新駅周辺)、鷺沼4丁目地区、武蔵中原駅前地区、延伸予定の横浜市高速鉄道3号線沿線の市街地、北部市場の市街地、津田山駅周辺などが「1号市街地」・「整備促進地区」・「2号再開発促進区」といった地区に指定されていることがわかります。

<『2030―2040年 日本の土地と住宅』より>

これらの地区の中には、すでに再開発によってタワーマンションの開発が予定されているところもあります。

例えば、小田急線の柿生駅南口の「柿生駅前南地区第一種市街地再開発事業」では、低層部に商業施設等を入れた約300戸のタワーマンション(高さ約110m)が2026年の竣工に向けて建設中です。

また、同じ小田急線の登戸駅では、「登戸駅前地区第一種市街地再開発事業」の都市計画決定が2023年11月になされました。低層部に商業施設を入れた約450戸のタワーマンション(高さ約140m)が建てられ、2028年度に竣工予定です。

さらに東急田園都市線では、「鷺沼駅前地区第一種市街地再開発事業」の都市計画決定が2023年9月に行われました。駅前街区では、商業施設と市民館(大ホール)や図書館等とともに、約340戸のタワーマンション(高さ約133m)が2029年に竣工予定となっています。

また、北街区も、区役所と市民館(小ホール)等を入れた約110戸のタワーマンション(高さ約89m)が2032年に竣工予定となっています。

もちろん、再開発自体は駅や駅前の再整備に必要です。しかし、特に川崎市は、市域が南北に細長い形状なので、川崎市が行う再開発は、同じ鉄道沿線にある近隣自治体の開発需要にも大きく影響します。しかし、周辺の自治体と協議・調整をした上で、各自治体が再開発を進めていくといった仕組みが現行の都市計画の中にないのです。